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作家の収支(森博嗣)

本とエンタメ

文章を書くのが好きで、子どもの頃に褒められた数少ない特技の一つです。

作家にも憧れたし、実際にあれこれ書いてみたり、習ったこともありました。
それなのに、なんで今ライターを志すでもなく、出版社に勤めるでもなく、淡々と会社員なんぞやっているのだろうと思ったときに、まずひとつとして、物書きという職業の得体の知れなさ、生計の立て方が謎、ということが挙げられます。何それ、そんなんで食ってけるの?という疑いです。
もうひとつは、書くことが好きなのに、それを仕事にすると生きていくために妥協しなければいけなくなるんじゃないか、という不安です。自分で選んだ商売で、好きでもないことを書き続けていたら、書くこと自体が嫌になりそうで、そうなると私はただ好きな行為を無くして行き場がない。
別に自分勝手にやりたいわけではなく、誰かに求められるようなものが創れたらとても素敵なことだと思っています。最後のひとつは、書くことがどの程度後天的な技術によるものなのか、測りかねていること。それが努力とある程度比例するものなのなら、私はその方が安心するし、よい職業だと思います。別に世捨て人になりたいわけでも、アーティストになりたいわけでもないのです。ただ、好きな行為に努力することで人に求められるだけの価値を提供できるなら、それはとてもよいことだと思います。あらゆる仕事に共通する、価値と価値の交換です。
 
で、前置きが長くなりましたが、本書です。
森博嗣が赤裸々に語る、作家の収入と支出、という中身。目の付け所が、幻冬舎っぽい。
作家の収入はどんな仕組みで、出版のお金の流れはどうなっているのか、私が抱く物書きへの不信感のうち、少なくともその1(何それ儲かるの)については把握できるようになっています。でもまぁそれらは常識の範囲として、その仕組みを人気作家に当てはめると、どれくらいのお金に変わるのか、主に時系列グラフを用いて具体的に示しているのが面白いところです。淡々と数字を挙げ、仮説を当てはめていくところなど、とぼけた雰囲気が犀川先生ぽいですね。
結構、儲かるものなのねというのが正直な感想。つぎ込む先が不動産や車というのもちょっと生々しい。まぁ鉄道模型のための土地だけれども。裏話系の本としても、題材が異色だと思います。
 
しかし、森博嗣っていつの間にか引退されてたんですね。まずそれに驚いた。名古屋にいた頃にファンだという後輩に借りて、S&Mシリーズだけ読了。往年のライトノベルファン(私は中高と少女向けライトノベルは結構読んでたクチ)を満足させるフェティッシュな設定と概念重視の世界観。同じようなスタイルだと、京極夏彦の方が厚み(物理的にも厚かったですねこの人)があって好きだったけど、結構、楽しく読みました。ちょうど名古屋が舞台というのもよかった。
 
作家への不信感の残りの2つについても少しだけ触れています。小説がいかにマイナなもの(森博嗣風に)であり、書くことが大切で、書き続けることがもっと大切であること。確かに、何かを習慣化することが一番難しい気がしますね。
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