読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

るきさん(高野文子):30代独身女性必読、だと思う漫画

本とエンタメ

ある日書店で立ち読みをしていたら、「るきさんのようにひとりメカブを食べて満足できるような、そういう生き方が幸せだと思う」というようなことを高山なおみが書いていて、妙に心に残りました。そこから思い浮かんだ食卓がぽつねんとしてさみしげで、そんなものをいいと言うのは高山さんがいつも誰かと食卓を囲んでいるからでしょう、という軽い反発を覚えるのと同時に、一本芯の通った生活感というか、充足感も漂っていてちょっとうらやましい感じもしたんです。

るきさん」は、1993年発売、高野文子作。バブル華やかなりし頃からはじけてしまうまでの数年間、ananで連載されていました。バブルの逆をいくマイペースなるきさんと、流行に目ざとい友達のえっちゃんがなんとなく暮らす毎日を、なんとはなく描いて妙に心に残る漫画です。

立ち読みしてから少し経った頃に見かけて、購入して、一読して、もう一読して、たぶんもう一回くらい読んで、なんて面白いんだろうと思いました。絵に独特の浮遊感があって、漂う空気が気持ちいい。たぶん、アングルが映像的なんだと思う。色遣いも独特でお洒落。凸凹コンビのるきさんとえっちゃんの日常もどこか浮世離れしていて、つかず離れず都会の距離感です。会社員の私はどちらかと言えばえっちゃんの喜怒哀楽の方が分かる気がします。るきさんのあっけらかんとした暮らしぶりはかなりうらやましい。でも、バブルがはじけて景気が落ち込む中、あっさりと日本を捨てて去った(らしい)るきさんに、「ほんとにナポリかぁ?」とつぶやくえっちゃんの地に足ついた感じは、かっこいいです。馴れ合わない大人の友情だし、それを可能にする自立した大人の一人暮らしだなぁと。一人暮らしをしていると、自分が自分のためにしか生活していない負い目、みたいなものを感じることがありますが、この漫画はそんな気持ちを軽くしてくれて、同時にそうであればもっと自分らしくあれと叱咤激励してくれる、懐の深さがある気がしました。今読んでも古びていないです。

るきさん (ちくま文庫)

るきさん (ちくま文庫)

 

 ところで、私が新しい本と出会うのは「人」からの紹介が多いです。「人」には知り合いだけでなく、読んだ本の中で触れられていた別の本や、著者が影響を受けた作家なども勝手に含めています。読んだ本から次に読みたい本へとバトンを渡す、もしくは読んだ本が次の本を呼んでくる、「ひとりブックリレー」をしているわけです。だから私、「るきさん」は高山なおみに紹介されたと思っています。何であのシーンをわざわざ取り上げたのか、あんな風に書いたのか、「紹介者」の気持ちを探るのも読書後の楽しみ。メカブっていうチョイスはマイペースな生活感が出ていてなかなか面白い選択ですよね。実際ストーリーの中ではえっちゃんが暑気払いに豪勢な鰻の蒲焼きを買ってきていて、その鰻とるきさんメカブの対比が2人の生活意識の違いを表していて面白い。鰻を買って、メカブの幸せに負けた感じ。一瞬の鰻と永遠のメカブ。お金を使う幸せと、使わない幸せ。でも私、そんな事実に気づきつつも、やっぱり鰻買ってしまう人間かもしれません。

 

 

 

 

広告を非表示にする