今週のうわ言:ひとり暮らしの星?ゾウの花子考
ゾウの花子が亡くなったというニュースを見て、おぼろげな記憶が甦りました。そういや、誰かが井の頭公園にゾウがいるって言ってたなと。井の頭沿線に住んでいて、貧乏学生だったころの散策先と言えば井の頭公園だったのに、今さらですがなんで行かなかったのか不思議です。うっかり行きそうなものなのに。なんならスワンボートまで漕いだというのに。
花子が各局で取り上げられて、日本中に流されているのはいかにも東京発のニュースだなぁと思うのですが、それにしたって人々の悲しみようが激しくないですか。うっかり行きもしなかった私ごときがニュースの衝撃を推し量りようもないのですが、インタビューを見るにつけ、なんだねみんなその嘆きようは。特にやや年配の女性。悩みがあるといつも花子のところに来てたんです、とか、親の死に目でも泣かなかったのに涙が止まらない、とか。花子だけが心の支えだったんです、というセリフに至っては、ゾウのことよりも女性の人生のほうが気になってしまいました。お母さん大丈夫ですか。
聞けば花子さんは結構波乱の人生だったんですね。50年に渡るひとり暮らし、荒れた夜もあった、孤独な夜もあった、やさしさに触れた日も、ただ雨に打たれた日もあった。と中島みゆきの歌になりそうな孤独な女の生きざまです。本意ではないでしょうが、殺人事件もありました。そんな歴史があっての今だから、お母さんたちがあれほど涙を流すってことなんですかね。よくよく見れば、年取った小さい目が悟りの境地にある気がします。例えるなら、ゾウ界の瀬戸内寂聴。あたい昔は結構悪だったのよ、今はやめたけどね。そう言ってます(たぶん)。
果たして50年以上も一頭で飼うことがゾウにふさわしいのか、という議論もあります。亡くなる前から飼育環境への批判もあったそうですが、時代もあるし、動物側の慣れもあるし、一概に言えないと思います。私は生き物には自然体でいて欲しいので、できれば生育環境に近い状態で、動物が「あれここそういや動物園だっけ」と思うくらいがよいなぁと思いますが、さて本人(本ゾウね)に聞くわけにもいかないし、亡くなった今となっては分からない話です。