来てけつかるべき新世界は、結構来てけつかるべきだった件

ヨーロッパ企画の「来てけつかるべき新世界」の大阪公演最終日に駆け込んできました。ずいぶん前に公演のお知らせハガキは届いていたものの、旅行の準備やら旅行やらで今回は無理かもー、でも行きたいかもー、つーかそんなに遊びほうけたらだめかもー、と思い自粛しようとしていたのですが、ネットで感想検索したら…なんかみんなが面白かったって言ってる…!結局、集合知に負けて?当日券をぽちっとして仕事を置いて駆けつけました。仕事場からABCホールの近いこと。ありがとう小さい街大阪。

以下、感想メモです。ネタバレです。でもあと半月くらいで終演ですね。

感想1 前回よりもストーリー性があって私は好き

お話は、少し未来の新世界(大阪の下町ね)を舞台に、ドローンやロボットやAIが当たり前になりつつある中、それゆえの様々な事件が起きるというものです。新世界・ミーツ・ドローン。未知との遭遇を人(大体おっさん)がどう反発し、受け入れていくのかを基本コメディでお届けしています。何かの記事で、作・演出の上田さんが大テーマ(今回の場合は新世界にドローンがやってきたらどうなるか)が決まったらあとはエチュードを重ねて脚本をつくる、的なことを言っていた気がするんですが、1話から5話まで展開するストーリーは個別エピソードの積み重ねで出来ており、群像劇の様相もあります。とは言え、前回の「惑星ブンボーグ」に比べると迫りくる強大な存在が話をだんだん煮詰めていくので、一連のストーリーとしても楽しめました。強大な存在っていうのが、まあ、サイバーゼリアっていうフランチャイズレストランなんだけれども(某激安イタリアンをモデルに、経営者がAIになることで超低価格&超フランチャイズ化されていくという。なんかありそうで怖いけど笑える)。

感想2 新世界ってひとつのVR

もうひとつ、舞台設定としてアナログとハイテクのコントラストが肝だと思うのですが、新世界という場所が本当にあんなところなのかは別として、一つのステレオタイプとして完成していることはすごいなぁ、と思ったのでした。渋谷とか、新宿とか言われるよりずっと想像しやすい。浅草なんかは近いでしょうが、小粋なところがいじりにくいですよね。ほんとにあんなおっさんが昼間から将棋してたり、阪神のユニフォーム着てたり、飛田に通ってたり、串揚げ二度付けしてたりするのかは分かりませんが、そう言われれば新世界、という記号性の強さは、実に舞台向け。見れば行った気持ちになる、一種のバーチャル・リアリティかもしれません。そして見る側が共通認識を持ちやすいことで、ハイテクネタが冴えます。串揚げロボットアームであげるんかーい、的なつっこみが容易。ちょっぴり混じる演者さんたちの標準語は、ご愛敬です。大阪で大阪弁の芝居するの、緊張して嫌でしょうね。

感想3 新世界が、もう来てけつかってる!

最後にもうひとつ。お芝居の中ではたくさんの「近未来あるある」(正しくは「近未来ありそうありそう」だな!)が盛り込まれており、そのありそうでなさそうな感じが非常に面白いんですが、一部はもう近未来の話ではないかもしれません。例えば将棋ソフトに人が勝てなくなり、今ではインカムに将棋ソフトを内臓させて、ソフトを使って勝負をするのが当たり前になっている、という話。観にいった前日に棋士が将棋ソフトの不正使用の疑惑で出場停止になったというニュースが流れており、ぎくりとしたのでした。また、舞台の串揚げ屋の食べログ評価が、第3者の不正によって3にまで下げられたというエピソード。現実では、少し前に社員による不正操作疑惑で炎上騒動が起きたばかりです。想像できる未来は実現できる、みたいな格言がありますが、想像できてしまったら、あとは想像できないほど早く実現してしまう、最近の技術革新にはそういうスピード感がある気がします。台本を作成したのは少し前としても、その時ネタとして書いたことが、ある意味現実になってますもんね。近未来あるある、すーごい面白くて笑いまくったけど、笑ってる場合じゃないのかも。

 

以上、とっても面白かったので、時間があればもう1回見に行きたかったです。次回作も楽しみ。